お洒落な家を建てたいなら普及サイズのサッシは避けるのがとにかく手っ取り早いのですが。。

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今回はウチが最初に工務店さんとプランの打ち合わせをしていく中で、部屋をお洒落な感じにしようとする際の予算と諦め所の配分の仕方で、成る程なあと思った部分がありましたので文章にして残しておこうと思います。

 

結論から書けば、部屋を分かりやすくフォトジェニックにお洒落にしようと思うと、サッシに特注サイズの物を使うのが一番手っ取り早いです。あれこれ考えるより特注サイズのサッシをいい感じの所にちょいと付けてあげさえすれば、フォトジェニックな部屋があっという間に完成します。とは言うものの、特注サイズのサッシはお値段が高く、家中のサッシを特注サイズにしてしまうと下手をしたら100万近くは軽く予算オーバーになってしまいすのでリビングやキッチンだけに特注サッシを配置して、後は普及サイズで、という組み合わせが現実的かな〜と、話はとても単純なようで、サッシのサイズは実はそんなに単純な話でもなかったりしたのでした。これは自分も実際に設計士さんとプランなどの打ち合わせをして初めて気がついた部分です。

 

サッシは建物の開口部にあたる箇所ですから、壁量が建物の強度に直結する重要な要素になる以上、安易に特注サイズのサッシをポンと入れればいいでしょという話にはならかったりするところが、この特注サイズのサッシの難しさなのでした。

 

特注サイズのサッシを入れました、開口部が大きくなりました、壁量が足りません、或は特注サイズのサッシの幅が柱の1間2間の間隔を微妙にはみ出しており、柱をもう一本抜かなければなければなりませんという事になれば、建物の骨格から設計し直す必要も生まれてしまう訳です。そこを更に突き詰めれば、建物の工法の選択、という話に発展していくのが、この特注サイズのサッシを使うということの本当の意味なのですよね。在来工法では柱間の寸法が1間1820mmと決まっていますので、サッシの大きさや取付位置はそれに従うしかなく、また建物の強度を確保する為の必要な壁量も決まっているとなれば、在来工法はデザインという面で制約の多い工法だと言うことができるでしょう。その制約から逃れられる、開口部を大きく取っても強度的にも充分な性能を確保できる工法が、つまりラーメン構造を採用した工法になる訳です。

 

先の熊本で起きた大地震の際、南側に大きな開口部を設けた在来工法で建てた住宅が軒並み倒壊してしまったことは記憶に新しいですが、これはその大部分が在来工法での壁量不足が引き起こした倒壊であるようです。そういう意味では、あくまでもフォトジェニックにこだわり、開口部を大きく取る、または1間2間の柱間のサイズからはみ出たお洒落な窓にどうしてもするということなら、工法としてはラーメン構造かRC構造を採用するべきだと言うことはできると思います(木造モノコックは目指すお洒落感がまた別のセンスです)。

 

これは決して在来工法がラーメン構造と比べて強度で不利ということではなく、在来工法でも壁量をきちんと確保できていれば他の工法と同等の強度を確保することができます。YouTubeには在来工法で建てた住宅の耐震実験の動画で「震度7の揺れに5回連続で耐えました!」的な動画が上がっていますので、お時間のある時に検索して見て下さい。

 

ついでに震度7の揺れに耐えたその住宅のサッシのサイズに注目してみると、在来工法で建てた木造住宅の強度とお洒落であることの相関関係がなんとなく理解できるのではないかと思います。普及サイズのサッシを使うということは壁量と採光量の確保という面で、いかにそれが有利であり、それがつまりそのサイズのサッシが普及する一番の理由なのだということが良く分かると思うのです。ラーメン構造と比べ、コストの面では在来工法が有利、皆さん安価に頑丈な家を建てたい、ということになればその在来工法で必要な壁量と採光量を確保できるサイズのサッシが普及サイズになっていくのは自明のことなのでした。そして、同時にそれが住宅の見た目が平凡になってしまう大きな原因の一つであることも理解できるのではないかとは思います。自分は工務店さんとプランの打ち合わせをする前は、普及サイズのサッシが大量に普及しているのは、サッシの製造上の都合なり、たまたま普及したサイズが何かの根拠がある訳でなしに時代と共に固定化してしまっただけ、のような印象を持っていたのですが、とんでもない思い違いであることもここで理解できた訳です。

 

ラーメン構造と在来工法のメリットデメリットを整理して、自分ら家族に必要な事項に落とし込んで、最終的にウチは在来工法で建てることにした訳ですが、在来工法で建てると決めた以上、そこに予算の制約も加えると、ウチはフォトジェニックであることに対する未練を成仏させる必要があった訳です。未練はキレイさっぱり成仏させられましたと言えば嘘になりますが、サッシのサイズとお洒落感の関係、そして工法の違いの拠るコストの差、またそこから生まれる質感の違いなどの理解は、未練の成仏にはとても役に立ちました。ウチはフォトジェニックであることより無垢材の構造材で建てられた建物の持つ独特の感触の方を外す事ができなかったのですよね。

 

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その結果、ご覧の通りですが、全く普通なサイズの吐き出し窓の入ったちょっと鈍臭い♡リビングにはなりました。バルコニーがありますので基準法の立ち上がり12cmの「またぎ」部分もしっかり残ってます。床を上げたら建築コストが大幅にアップしてしまうのでそれもナシです。でもまたぎの部分に化粧板を付けてそれなりにそこらの分譲住宅っぽくはならない工夫はしています。ある意味、見た目を諦めるということの本質がここに全て集約されている訳ですが、でもこれならウチとしましては許容範囲です。

 

その代わりと言うのもなんですが、風通しの良い建物配置(間取り)、セルロース120mm断熱の持つ調湿機能、無垢の構造材の持つ独特の感触、地松の無垢材フローリングの感触、珪藻土の感触と、あとは壁と高さのある勾配天井(2850mm)を設けたことで、自分らの優先順位の高いこととして望んだことをちゃんと実現したリビングにはなりました。ウチの予算でお洒落サイズのサッシを入れんが為にラーメン構造を採用したなら、こういう所に費用は回せず、使い心地の部分ではもうちょっと別の感触にはなったと思います。もちろん、どういう選択をするかは各ご家庭で判断は違ってきて当然だと思いますし、単にウチの場合はこういう選択をしました、というお話です。

 

個人的には普及サイズのサッシを使用することで必然的に制約されてしまうビジュアル面を許容できるのかできないのかさえはっきりできれば、工法の選択やお洒落要素に対する予算の配分に関しての迷いは、割とあっさり整理できるのではないかという風には考えます。普及サイズのサッシはとにかく安く、サッシを全て普及サイズにするだけでも予算の配分に余裕が生まれるというのがポイントだと思います。ラーメン構造を採用したからと言って在来工法と比べて耐震性能が良くなる訳ではありませんし、ラーメン構造の増額分で予算がいっぱいになり、サッシを普及サイズでまとめてしまうのも無意味ということが分かるだけでも、ここら辺の整理の仕方は大分違うと思うのでした。