ウチが注文住宅を大手ハウスメーカーで建てなかった理由

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そういえばここのブログにこのトピックがなかったな、と思って書いておきます。

 

ウチは大手にはプランも頼んでいません。大手の企業風土というものがそもそも注文住宅という形態に合わないという考えがウチにはあるのです。言ってみれば注文住宅に求めるものの期待値の個人差の部分でもありますので、これは仕方なかったと思います。

 

では、ウチが大手に頼まなかった理由を箇条書きにしていきます。

 

 

1:大量仕入れのメリットはない

今はちゃんとした組合に名を連ねたり、横の繋がりを作れている工務店ならキッチンやバス、トイレのような内装パーツは半額かそれ以上の値引きで仕入れられています。ウチは東ガスのOzoneの指定工務店に選ばれている所に頼みましたので、おそらく東ガスの付き合いから資材を引っ張ってこれているのだと思うのですが、水回りは全てTOTOの規格品で定価の半額でした。電気関係もパナですが、大体定価の半値でしたし、それ以下のもあります。もちろん、大手ならもう少し割引になるのかもしれませんが、ウチが頼んだ工務店との差額ではほんの数パーセントに過ぎず、仕入れコストで大きな差は付きませんでした。例え仕入れコストで多少有利になったとしても、大手はテレビのCM料金、俳優さんのギャラ、広告代理店への支払い、モデルハウスの建設費用、住宅展示場の場所代、大量の社員の給料とボーナス、それら全てが地場の工務店と比べて莫大な費用になりますから、仕入れコストの数パーセントの差くらいは軽く吹き飛んでしまうと思われます。一般的に、大手の施工した住宅は同じ価格で施工された地場の工務店などの住宅と比べて内装などのグレードがワンランク低くなってしまう事も多く、コストパフォーマンスは概して悪い、というのは定説になっていると思います。

 

 

 2:地場の工務店設計事務所であっても完成保証や瑕疵担保保険制度が整っている

地場の工務店の場合、施工期間中に工務店が倒産してしまうリスクもありますが、今では完成保証という保険があります。この保証は国土交通省の指導のもとに設立された公益法人が運営しています。この保証に加入していれば施工前、或は施工途中に頼んだ工務店が倒産してしまった場合でも、例え建築途中であっても倒産した工務店の債権者に家や資材を持って行かれることはありません。ただし、住宅完成保証はその保証機構に加入している工務店に頼まないとその保証を受けられませんので、予定のある方は確認してみてください。もし、完成保証に加入していない工務店なら、そことは契約するべきではないと思います。瑕疵に関しては、こちらは日本で営業する住宅供給事業者には瑕疵担保保険への加入が義務化されていますのでこれは大手、中小問わず、全く同じ保証が受けられます。なので、ちゃんとした工務店設計事務所に頼む限り、保証の面で大手ならではのメリットは殆どないのですよね。

 

 

3:例えば「条件付き土地」なんて抱き合わせ販売には共感できない

土地と建物はそもそも別の税金が掛かる別の物ですし、注文住宅というなら施主はそこの組み合わせからキッチリ自分たちで決めたい物なのではないのでしょうか。注文住宅は主観と客観なら主観の割合の圧倒的に高く、且つマンションのような買い直しをするような類いの物ではありませんので、注文住宅では色んな要素を全てお客の側で自由に選べることが何より優先されるべき事だと思う訳です。それなのに、一事業所の都合の為にお客側に無理な妥協を飲ませてもオーケーという発想が出てくること自体に、ちょっと共感できません。もちろん大手の建てる住宅に魅力があれば抱合せ販売でもまだ許せますけど、商品開発の部分でお客に対する誠意どころかそれが「無知な奴を騙せたらラッキー」のような意図を疑うしかないものとなれば、さすがにもう一線を越えてるよなと思う訳です。こっちだって人生かかってますからね。抱き合わせ販売なんてことはせず、正々堂々、人生をかけて魅力のあるものを考えて作っている所が現にあるのですから、自分らはそこに頼めば良いだけの話だと思います。そういう所の違和感を大企業の組織の力でねじ伏せられる、という手応えの中で交渉することが日常になってしまっている環境が、注文住宅という性質のものにはそもそも不向きだと思うのです。

 

 

4:大手は事故や瑕疵があった場合、マンションは保証しますが注文戸建は逃げています

良くマンションで瑕疵が出た場合に大手は手厚い保証をしている前例がある為、戸建でも大手はマンションと同じ対応をするだろうと勘違いする方が圧倒的に多いのですが、GoogleYouTube等で「戸建」「欠陥住宅」のような語句で検索を掛けてみますと、大手で大きなミスや事故が出た場合、大手がユーザーの満足のいく形の保証をした形跡がほぼないことに気がつくと思います。マンションと戸建住宅では、裁判では公共性の部分で扱いが別のものとなっているのです。つまり、戸建住宅は裁判ではほぼ個人の注文の仕方が悪い使い方が悪い、という処理のされ方をされてしまうのです。一方、マンションは大規模マンションであればあるほど、そこで発覚した瑕疵は個人の注文の仕方が悪かった、使い方の荒さとは言い難いという証拠が集まりますので、大規模マンションで瑕疵が発覚した場合、建築裁判でデベロッパーが負ける場合があることを大手はちゃんと理解しています。なので、大手は大規模マンションは手厚く保証しますが、戸建の場合はどんなに大きな事故や瑕疵が発覚した場合であっても、会社側にとって一番負担の少ないリカバーをとりあえずして、あとは逃げ切る体勢を整えてしまうのです。

ご存知の方も多いと思いますが、裁判制度は過去の判例を基準に判断を決めるものなのです。裁判で過去の判例を覆すことはとてもとても大変なことで、特殊な裁判でない限り過去の判例を覆せることはまず難しいと考えられます。戸建住宅の建築裁判は特殊な裁判では全くありませんので当然、過去の判例が判断の基準になります。過去の判例YouTube等でも確認することができますので、知らない方は調べることをお薦めいたします。これだけの大きな被害があっても施主が負けるという判例が覆されることは難しい、という現実とは一度向き合うべきですよね。

更に、個人の戸建の建築裁判はマンションと比べて公共性の面からニュースで大々的に取り上げられることがまずありませんので、風評という部分でも無傷でいられる確率はとても高いのです。しかも大手は地場の工務店と比べて、ここで風評の影響を受けることがとても少ないと考えられるのです。どうも人は「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信を、大手が相手だと持ってしまう傾向があるようです。これが地場の工務店になりますと皆さん掌を返したように慎重になる訳ですが、そういう部分でも大手は守られていると言えると思います。そして大手はそれを分かって、それを利用していると思います。

注文住宅を大手に頼んだ場合、個人としては頼みの綱になるはずの民事裁判や風評の面で、実は始めからはしごを外されている状況にあるという、そこはマンションの場合と大きく違うということを理解しておくべきだと思います。

 

 

 

以上のように、色々考えれば大企業の企業風土がもう注文住宅という施主にとってやり直しの利かないイベントには適さない、ということで判断して良いと思った訳です。大企業の「チームで仕事」という個の力や責任を曖昧にできてしまう哲学と、大きな組織力で個人を握りつぶすことが容易くできてしまう環境で、個人の主観の固まりである注文住宅というイベントを取り仕切ろうというのには無理があるということです。大企業の仕事のやり方があるが為に、我々個人の立場で注文住宅の計画を成功させる為に必要な事などが明確な意志のもとにうやむやにされている以上、もう大企業はそこには向いていない、で良い訳です。加えて大手の注文住宅はコストパフォーマンスが悪いですから、もう大手に頼むメリットはウチにはなかったのです。

 

大手ハウスメーカーというのは元々が戦後復興、高度成長期に必然的に生まれた大量供給の需要があればこそ意味のあった事業形態なので、住宅供給が飽和状態にある今の日本の社会ではそのデメリット面の方が大きくなってしまっているということが、住宅の専門家の間では言われています。自分たちもその通りだと思っています。

 

世の中には住宅関連の仕事を好きでやっているものの、大企業の風土がもう実情に合わないという考えの人たちが沢山、大手の風土から脱出して活動しておられます。そういう人たちの集まりが、つまりちゃんとした地場の工務店なり個人の設計事務所になる訳です。注文住宅はそういう人たちの理念を頼る方が理に適っていると思いました。もちろん、ダメな地場の工務店なり設計事務所は施主が頑張って見抜ぬくしかない所ではありますが、そこさえ施主が面倒臭がらずに克服しさえすれば、大手で頼むより「確実」で「楽しむ」仕事で自分達の家を建てて貰えるでしょう。

 

自分らもちゃんとした工務店を、面倒臭いのを我慢して(後から段々楽しくなってきました)みつけ、限られた予算の中でも本当に「確実」で「楽しい」家を建てて貰ったと、その工務店に感謝しています。