信用のある相手の「好き」に共感できることが共同作業では大事なのです その2(新築無事に終わりました!)

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先週の続きです。
 
床材の種類は大きく分けて、針葉樹系のと広葉樹系の2種類に分かれるのですが、見た目やインテリアとしての治まりとしては、圧倒的に広葉樹系の方がお洒落で都会的な雰囲気にできるのですが、ウチが頼んだ工務店は広葉樹系の床材を一切使ってはくれないのでした。とにかく針葉樹系にしよう、と。地松かヒノキか杉かパインか、それ以外の材からは選んで欲しくありません、と。
 
これは、まあ、家族で一番モメたところでした。。
 
針葉樹系は木目や節のうるさいものが多く、どうあっても田舎の天然酵母のパン屋さんのような過剰なオーガニック風味の見た目になってしまう訳です。特にパイン材はトロピカルなリゾート風味満載で、ちょっと浮かれた雰囲気にはどうしてもなってしまうのですよね。
 
工務店の主張としては、広葉樹系の床材は踏み心地が硬くて冷く、靴を脱いで生活する日本の床材には適していない、ということなのです。針葉樹であればクッション性も高く足腰の負担も少なく、また熱伝導率が低くて冬でも足下がひんやりしずらく、靴を脱いで暮らす習慣の中では針葉樹系のメリットはかなり大きいです、というお話でした。
 
結果論ですけど、実際に生活してみて工務店さんの言う事はもっともなお話だと思いました。針葉樹系無垢板の感触というのは、裸足で生活すると本当に気持ちが良く、広葉樹系は床材に適していない、という話も納得なのでした。また、針葉樹系の無垢材の床は確かに足の負担が少なく、特に床をタイル貼りした水回りのエリアと比較するとその差は実感し易く、疲れている時でも本当に歩きやすいのでした。
 
家の造りという点から見てみますと、今の木造住宅の場合、基準値以上の耐震性を持てる強度を確保する為にどうしても昔の木造建造物のような木質感のある床の踏み心地が失われてしまう部分はあります。建物の強度として、床は水平剛性を司る部分になる訳ですが、その水平剛性を上げるには現状、床の下地材に構造用合板を使うしかなく、そこにどうしてもベニア板の硬くて殺伐とした感触が床の踏み心地に含まれてしまうのです。
 
それは、例えば古い木造校舎や寺院などの床の踏み心地なんかを期待するとがっかりする床の踏み心地には違いなく、そこでフローリング材に柔らかい針葉樹系の材を使う事で、その剛床工法にありがちな硬質な踏み心地を緩和することができるのです。これで硬い広葉樹系のフローリングにしてしまうと、見た目は洋風でお洒落にはできますが、確かに足に負担が掛かったと思います。この辺りの考え方は、さすが「木が好き」なだけのことはあるなー、と思いました。偏りはあっても、嘘はないのですよね。
 

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ただ、設計の段階でそこの実感のない時にそれは中々理解できないお話でもあり、見た目の過剰なオーガニック感は欠点でしかなく、そこをどうまとめればいいのか、そこで工務店の選択も含めて、我が家はかなり混乱したと思います。針葉樹で床を仕上げてしまうと、内装の見た目を洋風でお洒落な感じにしよう、という当初の構想を諦めざる得ない面があるのは、割と高いハードルではあったと思います。
 
で、ここでデザインのことも、もう少し調べてみるか、という感じでネット漁りを始めた訳です。その工務店を断るならやれることをやってからだな、と。針葉樹の床材でも自分たちの納得できる感じの内装はないものかと、寝る時間を削って夜な夜なネットを徘徊しました。
 
色々調べて行く内に「和モダン」のカテゴリーの中に、家族も納得できる内装のまとめ方があるんだというものを見つけ、内装の予定を洋風から和モダン的な方向に転換することにした訳です。ただ、和モダンで本当にお洒落にしようとすると、洋風でお洒落な内装の物よりもそのカテゴリーで一般流通してる建材が少ない為、造作の割合がどうしても高くなってしまう為、3000万しか使えないウチの場合は一般流通している建材を使ってそこそこでまとめるしかない、というのはその時点で分かりました。それはそれで嫌かも、とは思いましたが、そんな中、旭化成のモデルハウスの内装のまとめ方は、かなり参考になることにも気がついた訳です。
 

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旭化成の内装は安い一般的な物を使いつつ「70年代的な上品さ」の感じに仕上がる所に特徴があり、一般に流通している建材を和モダンと合わせる場合に、その「70年代的な上品さ」を拠り所に合わせていくと破綻の少ない印象にできるという手応えが得られるのでした。旭化成の、悪く言えばその時代遅れのセンスが、ここでは幸いしたのかもしれません。
 
最終的には和モダンと言いつつ、ほぼ旭化成の割と刺激の少ないセンスの方に寄った感じにはなってしまいましたが、針葉樹系のフローリングでもウチの目指していた「過剰なオーガニック感のない」「全体の印象として破綻のない」「モダン」な感じには十分できたと思います。デザインとしては当初の「夢」から比較すれば相当つまらない感じになりはしたものの、訓練された大工さんの精度の高い施工からも見た目からも、そして使い心地も含め、全体としてある種の普遍性を感じられる仕上がりにはとりあえずできたと思いますし、自分らみたいなタイプの人間が長く暮らすのには申し分のない住宅になったと思います。
 
相手のモチベーションを引き出す為には、こちらも踏ん張る必要のある所でちゃんと踏ん張らないとダメなんだという事は、今回改めて思ったでしょうか。振り返ってみると、フローリング材はウチにとってはかなり大きな踏ん張り所でしたし、あそこで良く持ち堪えたと自分たちを褒めてあげたいです。設計施工を設計事務所のような所ではなく、見た目は多少譲っても質実剛健工務店にお願いしようと決めたその優先順位を曖昧にしないことも大事でしたし、これ以上お洒落にするならもっとお金を使うか、お金が使えないなら設計事務所に行って構造の部分の希望や使い心地の部分を諦めるという選択になってしまうので、この落としどころが、ま、自分らの運というか星回りも含め、ベストだったのかなと。
 
という訳で、床材一つ取ってもこれだけ振り回される訳なので、実は他もこういうことの連続なのですよね。新築は想像以上にエネルギーを使いますし、完成した時は正直、もうヘトヘトでした。カーテンを選びましょう、という段階では家族含め、エネルギーが既に残っておらず、なんか下手な選び方しちゃったね、という箇所が何箇所か出てしまいましたが、まーしょうがないです。