信用のある相手の「好き」に共感できることが共同作業では大事なのです その1(新築無事に終わりました!)

f:id:roboccon:20161009180634j:plain

ご無沙汰しております。

 

その後、ウチの新築は完成し、引っ越しも終えて、まだ手をつけていない段ボールなどありつつ、でも一段落しましたのでブログを更新してみようと思いました。自分の文章力がアレなので、ブログのやる気が出なかったというのもありますが、自分も新築をやるのに個人ブログを随分参考にさせていただいたので、自分にできることは自分もやっとこうという、そんな感じで。。

 

新しい家で暮らし始めて2ヶ月ほど経ちましたが、今の所大きなトラブルも瑕疵のような症状もなく、思った通りの暮らしができており、家族で満足しております。もちろん、小さな行き違いなどが全くなかった訳ではありませんが、見習い大工や見習い設計さんの仕事も混ざってますので、ある程度はしょうがないかな、という感じです。見習い設計君はこのやろー、な訳ですが逃げも隠れもせず、やれるリカバリーは全てやってくれたのと、それ以上のリカバリーをさせることがウチにとって損なのか得なのかを考えて、落としどころを見つけて、引き渡しを受け、あとは気分良く次の生活に向かっていくのが良いと思いました。

 

さて、本題です。今回はフローリング材の話します。

 

注文住宅の仕様で割と全体像を決める際に比重の重いパーツだなあと、後から思ったのでそのことを書いときます。

 

この家のフローリングは無垢板にしたのですよね。ただ、床材に関してウチはそんなにこだわっていなかったというのが本当の所です。無垢板のフローリングは値段が高いですし、むしろ予定としては予算を削らなければならない状況になればラミ板でも十分、という腹づもりでした。しかし、頼んだ工務店の目指す住宅には「こう」という物がハッキリあった為、ウチも無垢板のフローリングにするしかなかったのでした。

 

結局、木造住宅のメリット・デメリットを本気で考えてる工務店はどうしても「木が好き」な所ですから、そういう所でラミ板フローリングとかどうですか?なんて言い出そうものなら工務店のモチベーションがガクっと下がるというのが、あからさまにあるのですよね。

 

ウチとしては仕様の優先順位としては、まず構造が木造であること、構造材を気密シートや構造用合板などで密閉せず、湿気の通り道が壁内部からであっても必ず確保されている工法であることと、それと関連して断熱材がセルロースであること、白蟻対策も含め基礎のコンクリートに一体打ちの工法を採用していることが一番にありました。

 

壁の内側の湿気の通り道を必ず確保してある工法にこだわる理由は別の機会に書くとして、その優先順位の一番に来るものを外さないとなると、色々な工務店やHMの話を聞いて回っても、最終的にはどうしても「木が好き」な工務店になるしかなかったのでした。

 

「木が好き」という部分をもうちょっとフラットに考えて無垢材のフローリングでなくてもOKな “ちゃんとした” 工務店になると、大体は木造か鉄骨のラーメン構造を採用している所になってしまい、鉄骨はウチはとにかくナシなので、木造ラーメンはどうなんだ、という話になりますと、木造ラーメンは構造用合板などで壁の内側の湿気の通り道を遮断する工法なので、ウチとしてはナシになる訳です。

 

また木造ラーメンは、使用する金具が特許関連の物が多いことと集成材を使うことで、どうしてもコストが高くなってしまう面もあり、無垢板のフローリング→ラミ板フローリング分のコストダウンと相殺されてプラマイゼロにもなるか、もしくはもう少しお値段高めになってしまうのです。

 

特許関連の金具を使用しない、軸組なのかラーメンなのか壁式なのか良く分からない中途半端な工法で建てている(特許関連の金具と同じ強度が出せるのかは謎)所だと、確かにラミ板のフローリングを採用して、軸組的なことで建ててくれて、おまけに安くなり、最終的には施主のわがままを聞き入れてくれる形にはなりますけど、さすがにそれもどうかな、と思った訳です。

 

つまり、こちらの希望を言われればやるけどオーソドックスな仕事しかやらない所と、言われなくても自分たちの大好きな工法を日々極める事を楽しみながらやっている所と、その差は小さくないだろうと考えた訳です。例えば、人間のやることなので悪意はなくてもミスや事故は必ず起きてしまうのですが、その際リカバリーをどう対処する?という所を考えたら、その仕事、その工法が「大好き」で仕事を積み重ねてきている人たちは、一般的なリカバリー方法として知られていないようなことでも、その工法を熟知していればこそ思いつけるリカバリーを普通にやるのです。そこが結局は半年間という長い工程の中で積み重なって、最後の仕上がりの大きな差となっていくであろう事は、容易に想像ができた訳です。一般的なリカバリー方法にとらわれず、その工法にとっての最善の事を言われなくてもやってくれる安心感は、工務店選びで外せないことの一つではあるのではないでしょうか。

 

家は構造上、ひとたび壁を打ち付けてしまえば、中でどんないい加減なリカバリーがなされていようが、壁を落としてみないことにはそれが分からない性質のものです。バレなきゃいいか、という心理が働きやすい状況が間違いなくそこにはあるわけです。単純に人の性善説をどこまでも無邪気に信じてはたして大丈夫なのだろうか、という部分は大きいかもしれません。

 

「大好き」ということは、確かに人の偏りのある感情の部分を含む為、一見バランスを欠いた状態に見えなくもないのですが、「大好き」であるということイコール、いい加減なことを嫌う、というメリットが、一方ではある訳です。その「大好き」がベースになって鍛えられたバランス感覚と精度の高い技術がセットになれば、人間は初めて言葉以上の信用を身につけることができる訳ですし、それが昔ながらの人間の信用を担保してきた「修行」の習慣ではないでしょうか。それを敢えて避けようというのなら、それは裏があることを勘繰るのに十分な理由になると思います。

 

最近の施工技術に関して良く「誰が建てても」品質に差が出ないという話がされるのですが、「誰でもできる」ということは裏を返せばいい加減な人でも素質のない人でも施工に参加できることでもあって、それでも経営サイドが敢えて「誰でも参加させている」のは安い労働力の数を確保するという、ビジネス側の都合でしかない訳です。

 

ビジネス側の人たちは「いやいや、ウチはいい加減な人は雇っていません大丈夫です」と口先だけのことを言いはしますが、そのメーカーのモデルハウスを見学すれば掃き出し窓のような大きな開口部の左右の寸法が2mm以上狂ってる、押し入れの中の天井部分の施工がズレてる、壁クロスの淵のサイズがピッタリでなく余った状態の部分がめくれてる、2階部分の水平が狂ってる(水平器持参推奨)、二階や階段でちょっとジャンプしたら建物から「ミシっ」という音がしたなど、明らかに「口先だけ」が証明されたモデルハウスがそこにデンと建っている訳です。何度も書きますが、それが「大好き」で訓練された素質のある人は、そんな仕事が残ってること自体、本人のプライドがそれを許さないのです。

 

言葉だけの説明で辻褄が合ってればそれでいい、というのはいつからそんな時代になったのでしょうね。

 

もちろん、業界全体で考えれば「修行」の篩がきちんと機能してしまえば、今の時代ですと大工を志望する若い人が減ってしまう、という面はあるそうです。厳しく給料も安い世界に入ってくる若い人が年々減っているのだそうです。そういう部分で、業界全体としては誰でも参加のできるシステムを作らないと、住宅の数を供給することができなくなってしまうという事情がある、という話は良く聞かされました。ただ、若い人側の話を聞けば、それも大体は単にその人に適正がないか、適正のある人なら賃金をケチるから起こる現象のようなので、適正のない人はもうしょうがないので、賃金をケチられて辞めていかれることに関しては、経営サイドがお高いマンション暮らしや高級外車を乗り回して若い人の賃金をケチっているのであれば、それは“時代のせい”ではないでしょう。

 

自分たち施主側としては、ちゃんと大工に賃金を払っている経営者の所にまとまったお金を落としていく、ということしかできない訳ですが、それを地味にでもやっていくことが、施主の側としての良い業界にしていく為にできることとは思うので。こんなウチの考え方を全うするなら、もうレアケースと言われてしまう工務店を探し続けるしかないと言えば、その通りなのですよね。ただ、ウチは時間を掛けて探して、ちゃんと見つかりました。ウチのレベル(建物は3000万円/32坪なので、安くはないですが、注文住宅の世界では中のくらいです)でも探せば見つかるということは、世の中まだまだ捨てたものじゃないと思います。

 

最終的にはウチが頼む事に決めた工務店さんは、間違いなく「木が大好き」でしたし、そこで雇われている大工さんにも面倒臭いと思われる子弟関係がちゃんと残っていました。施工物件を2件内覧させて貰って、話もかなり長く聞かせて貰って、後天的なことも含めて、ここは間違いなく技術やいい加減な人をふるい落とすフィルターも機能していると感じましたので、ここはウチも無垢板のフローリングに“共感”するのも悪くない、と思ったのでした。コスト高の問題も、他の工務店に行けばどの道、別の理由でコストが上がってしまうことを考えれば欠点にはならないな、と。信用できるパートナーの「好き」に共感することも、共同作業で良い結果を得るには絶対必要なことなのですよね。

 

という訳で、ウチの床も無垢材にした訳ですが、無垢材の床材を何にするか、ここで一つの大きなデザイン面での妥協点を向かえてしまうのでした。(続く)