僕がローコスト住宅を止めた理由(その1)

f:id:roboccon:20151203021415j:plain

ローコストで住宅を新築できるというのは大きな魅力です。私も住宅に関してあまり知識のない状態の時は「安く建てられるんならそれに越したことはない」という考えでいましたし、業者さんの話を聞くであっても、そのつもりで話を聞いていたと思います。ただ、自分なりに調べれば調べるほどローコストで建てれば「それなり」のものを覚悟しないといけないということが分かってきましたので、最終的には私も普通に地域の工務店で建てることにしたのでした。以下、木造のローコスト住宅の仕組みに関して、私が住宅展示場やショールームで営業の人の話を聞く等して調べたことをまとめます。

 

1:過去の設計を再利用する、構造計算を端折る

土地の形や向き、施主の要望を踏まえて設計された住宅は、確かに世界に一つしかない建物なのですが、形が違えば建物の各部位への力の掛り方等も全て世界に一つになりますので、当然その強度やバランス等を一から計算をする必要があり、その作業はとてもコストの掛かるものではあります。その手間とコストを過去の施工例のテンプレ化された設計図を再利用して圧縮するやり方があります。もちろんその場合、施主の要望が取り入れられなかったり、或いはテンプレートにある形から外れた土地には建てられない、というデメリットはありますが、建築費はそこそこ安くできます。

 

また、木造の2階建て住宅までなら構造計算は必要ないという法律がある関係で、木造2階建なら構造計算をせずに設計を済ませてしまう業者も少なくないようですが、これはあまり誠意のあるやり方とは言えないと思われます。構造計算は細かい部分の建物の建て付け剛性に関わる作業ですから、そこを端折れば引っ越して半年経ったら壁の継ぎ目に隣の部屋が見えるような薄い隙間ができてきた、のようなことも起きてしまうのはもちろんのこと、床の歩き心地のような日常的な使い心地の部分にも大きな影響を(階段や二階を歩いた際、足場の剛性感に乏しい感覚)及ぼしてしまいます。いくら建築費を圧縮できるからと言っても、住まいの新築はそうそうやり直しの利くイベントではありませんから、それでは困りますよね。

 

2:地方ならではの施工価格を全国共通の広告で使用する

地方の場合、人件費や事務所の家賃等の固定費が元々安く、その為、建築費は総じて都内で建てる場合と比べて割安なのですが、そんな地方の施工例の価格をそのまま全国展開の広告で使っているだけの広告もあります。ローコスト住宅の価格表示には1000万を切ったものも中にはあるのですが、それは地方都市での施工例であって、東京で同じ価格ではまず建てられないようです。また、税抜き価格、外構工事の費用を含めず表示している場合が殆どなので、導入部分ではローコストだと思って契約してみたものの、最後の部分では至って普通の価格になってしまった、ということは良くあるようです。

 

一例として、私がタ◯ホームのモデルハウスを見に行った際に営業の方から聞いた話ですと、東京で普通にタマホームで建てるなら外構工事、消費税までを含めますと、おおよそ坪60万のような金額にはなりました。その時の私の聞き方として、「このモデルハウスのクオリティーで都内に30坪程度で建てるとしたらお幾らくらいになりますか?」という聞き方をしましたので、デラックスな仕様の設備を削ったり、建坪が増えればもう少し坪単価の下がる要素はあるのかもしれませんが、それでもそんなにびっくりする程のローコストではないのですよね。

 

3:賃金の安い組立工を雇う

これはもはやどこの大手メーカーでも採用している方法ではあります。今の木造住宅は2×4のような外来モノコック構造の普及や、在来工法であっても木材の人工乾燥技術の向上、集成材の使用による構造材の精度の向上とパソコンによるプレカットの導入で、適切な指示さえあれば学生が作業をしても酷い施工にはならないと言われています。良く言われるのが「プラモデルと一緒」という例え話なのですが、それは特別な技術がなくても誰でも組み立てられるという意味です。しかし、プラモデルであっても組み込み技術の上手下手は仕上がりに明らかな差を生みます。住宅建築ならその差が住み心地を直接左右してしまう訳です。

 

上手な人は、当たり前ですが、住み心地や歩き心地の部分で気持ちの良い建物に仕上げますし、且つミスの少ない仕事をします。下手な人は当然、住み心地は気にしなきゃこれでオーケー、施工ミスもしばしば起こる、というレベルです。もちろん下手な人程、安く雇えます。雨漏り等の単純なミスの起こる頻度は、安い賃金で雇った人の方が断然多い訳です。ただ、下手だからとと言ってゴルフボールが転がったりのような住めないレベルのミスは起きないというところがこの方法のポイントなのかもしれません。

 

構造計算を端折るやり方もそうなのですが、雨漏りレベルの施工ミスや壁のひび割れ程度でその建物全部建替えさせることは、例えそれを裁判に持ち込んだとしても認められないという現実が、 結局、業界の中で住宅建築のコストカットに利用されてしまっている部分は間違いなくあるのですよね。

 

品質としてランクが下がる、ミスが出ることを分かっていても、それで裁判に負けることがない以上、そこでトコトン利益を追求する、という道徳観を持っている業者(大手も含みます)であるかそうでないかを、ここでは見分ける必要がありそうです。もちろん、営業の方は立場上「ウチは大丈夫です」という根拠のない話(営業の人が裁判でこちら側の味方として証言してくれるはずもなく)をするしかありませんので、そこは自分たちの側で良い施工の建物の中に入った経験値を上げて、世の中の職人さん達の仕事の「質」を知るしかない部分ではあるのかもしれません。

 

                                  次回に続く