お洒落な家を建てたいなら普及サイズのサッシは避けるのがとにかく手っ取り早いのですが。。

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今回はウチが最初に工務店さんとプランの打ち合わせをしていく中で、部屋をお洒落な感じにしようとする際の予算と諦め所の配分の仕方で、成る程なあと思った部分がありましたので文章にして残しておこうと思います。

 

結論から書けば、部屋を分かりやすくフォトジェニックにお洒落にしようと思うと、サッシに特注サイズの物を使うのが一番手っ取り早いです。あれこれ考えるより特注サイズのサッシをいい感じの所にちょいと付けてあげさえすれば、フォトジェニックな部屋があっという間に完成します。とは言うものの、特注サイズのサッシはお値段が高く、家中のサッシを特注サイズにしてしまうと下手をしたら100万近くは軽く予算オーバーになってしまいすのでリビングやキッチンだけに特注サッシを配置して、後は普及サイズで、という組み合わせが現実的かな〜と、話はとても単純なようで、サッシのサイズは実はそんなに単純な話でもなかったりしたのでした。これは自分も実際に設計士さんとプランなどの打ち合わせをして初めて気がついた部分です。

 

サッシは建物の開口部にあたる箇所ですから、壁量が建物の強度に直結する重要な要素になる以上、安易に特注サイズのサッシをポンと入れればいいでしょという話にはならかったりするところが、この特注サイズのサッシの難しさなのでした。

 

特注サイズのサッシを入れました、開口部が大きくなりました、壁量が足りません、或は特注サイズのサッシの幅が柱の1間2間の間隔を微妙にはみ出しており、柱をもう一本抜かなければなければなりませんという事になれば、建物の骨格から設計し直す必要も生まれてしまう訳です。そこを更に突き詰めれば、建物の工法の選択、という話に発展していくのが、この特注サイズのサッシを使うということの本当の意味なのですよね。在来工法では柱間の寸法が1間1820mmと決まっていますので、サッシの大きさや取付位置はそれに従うしかなく、また建物の強度を確保する為の必要な壁量も決まっているとなれば、在来工法はデザインという面で制約の多い工法だと言うことができるでしょう。その制約から逃れられる、開口部を大きく取っても強度的にも充分な性能を確保できる工法が、つまりラーメン構造を採用した工法になる訳です。

 

先の熊本で起きた大地震の際、南側に大きな開口部を設けた在来工法で建てた住宅が軒並み倒壊してしまったことは記憶に新しいですが、これはその大部分が在来工法での壁量不足が引き起こした倒壊であるようです。そういう意味では、あくまでもフォトジェニックにこだわり、開口部を大きく取る、または1間2間の柱間のサイズからはみ出たお洒落な窓にどうしてもするということなら、工法としてはラーメン構造かRC構造を採用するべきだと言うことはできると思います(木造モノコックは目指すお洒落感がまた別のセンスです)。

 

これは決して在来工法がラーメン構造と比べて強度で不利ということではなく、在来工法でも壁量をきちんと確保できていれば他の工法と同等の強度を確保することができます。YouTubeには在来工法で建てた住宅の耐震実験の動画で「震度7の揺れに5回連続で耐えました!」的な動画が上がっていますので、お時間のある時に検索して見て下さい。

 

ついでに震度7の揺れに耐えたその住宅のサッシのサイズに注目してみると、在来工法で建てた木造住宅の強度とお洒落であることの相関関係がなんとなく理解できるのではないかと思います。普及サイズのサッシを使うということは壁量と採光量の確保という面で、いかにそれが有利であり、それがつまりそのサイズのサッシが普及する一番の理由なのだということが良く分かると思うのです。ラーメン構造と比べ、コストの面では在来工法が有利、皆さん安価に頑丈な家を建てたい、ということになればその在来工法で必要な壁量と採光量を確保できるサイズのサッシが普及サイズになっていくのは自明のことなのでした。そして、同時にそれが住宅の見た目が平凡になってしまう大きな原因の一つであることも理解できるのではないかとは思います。自分は工務店さんとプランの打ち合わせをする前は、普及サイズのサッシが大量に普及しているのは、サッシの製造上の都合なり、たまたま普及したサイズが何かの根拠がある訳でなしに時代と共に固定化してしまっただけ、のような印象を持っていたのですが、とんでもない思い違いであることもここで理解できた訳です。

 

ラーメン構造と在来工法のメリットデメリットを整理して、自分ら家族に必要な事項に落とし込んで、最終的にウチは在来工法で建てることにした訳ですが、在来工法で建てると決めた以上、そこに予算の制約も加えると、ウチはフォトジェニックであることに対する未練を成仏させる必要があった訳です。未練はキレイさっぱり成仏させられましたと言えば嘘になりますが、サッシのサイズとお洒落感の関係、そして工法の違いの拠るコストの差、またそこから生まれる質感の違いなどの理解は、未練の成仏にはとても役に立ちました。ウチはフォトジェニックであることより無垢材の構造材で建てられた建物の持つ独特の感触の方を外す事ができなかったのですよね。

 

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その結果、ご覧の通りですが、全く普通なサイズの吐き出し窓の入ったちょっと鈍臭い♡リビングにはなりました。バルコニーがありますので基準法の立ち上がり12cmの「またぎ」部分もしっかり残ってます。床を上げたら建築コストが大幅にアップしてしまうのでそれもナシです。でもまたぎの部分に化粧板を付けてそれなりにそこらの分譲住宅っぽくはならない工夫はしています。ある意味、見た目を諦めるということの本質がここに全て集約されている訳ですが、でもこれならウチとしましては許容範囲です。

 

その代わりと言うのもなんですが、風通しの良い建物配置(間取り)、セルロース120mm断熱の持つ調湿機能、無垢の構造材の持つ独特の感触、地松の無垢材フローリングの感触、珪藻土の感触と、あとは壁と高さのある勾配天井(2850mm)を設けたことで、自分らの優先順位の高いこととして望んだことをちゃんと実現したリビングにはなりました。ウチの予算でお洒落サイズのサッシを入れんが為にラーメン構造を採用したなら、こういう所に費用は回せず、使い心地の部分ではもうちょっと別の感触にはなったと思います。もちろん、どういう選択をするかは各ご家庭で判断は違ってきて当然だと思いますし、単にウチの場合はこういう選択をしました、というお話です。

 

個人的には普及サイズのサッシを使用することで必然的に制約されてしまうビジュアル面を許容できるのかできないのかさえはっきりできれば、工法の選択やお洒落要素に対する予算の配分に関しての迷いは、割とあっさり整理できるのではないかという風には考えます。普及サイズのサッシはとにかく安く、サッシを全て普及サイズにするだけでも予算の配分に余裕が生まれるというのがポイントだと思います。ラーメン構造を採用したからと言って在来工法と比べて耐震性能が良くなる訳ではありませんし、ラーメン構造の増額分で予算がいっぱいになり、サッシを普及サイズでまとめてしまうのも無意味ということが分かるだけでも、ここら辺の整理の仕方は大分違うと思うのでした。

 

 

ウチが注文住宅を大手ハウスメーカーで建てなかった理由

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そういえばここのブログにこのトピックがなかったな、と思って書いておきます。

 

ウチは大手にはプランも頼んでいません。大手の企業風土というものがそもそも注文住宅という形態に合わないという考えがウチにはあるのです。言ってみれば注文住宅に求めるものの期待値の個人差の部分でもありますので、これは仕方なかったと思います。

 

では、ウチが大手に頼まなかった理由を箇条書きにしていきます。

 

 

1:大量仕入れのメリットはない

今はちゃんとした組合に名を連ねたり、横の繋がりを作れている工務店ならキッチンやバス、トイレのような内装パーツは半額かそれ以上の値引きで仕入れられています。ウチは東ガスのOzoneの指定工務店に選ばれている所に頼みましたので、おそらく東ガスの付き合いから資材を引っ張ってこれているのだと思うのですが、水回りは全てTOTOの規格品で定価の半額でした。電気関係もパナですが、大体定価の半値でしたし、それ以下のもあります。もちろん、大手ならもう少し割引になるのかもしれませんが、ウチが頼んだ工務店との差額ではほんの数パーセントに過ぎず、仕入れコストで大きな差は付きませんでした。例え仕入れコストで多少有利になったとしても、大手はテレビのCM料金、俳優さんのギャラ、広告代理店への支払い、モデルハウスの建設費用、住宅展示場の場所代、大量の社員の給料とボーナス、それら全てが地場の工務店と比べて莫大な費用になりますから、仕入れコストの数パーセントの差くらいは軽く吹き飛んでしまうと思われます。一般的に、大手の施工した住宅は同じ価格で施工された地場の工務店などの住宅と比べて内装などのグレードがワンランク低くなってしまう事も多く、コストパフォーマンスは概して悪い、というのは定説になっていると思います。

 

 

 2:地場の工務店設計事務所であっても完成保証や瑕疵担保保険制度が整っている

地場の工務店の場合、施工期間中に工務店が倒産してしまうリスクもありますが、今では完成保証という保険があります。この保証は国土交通省の指導のもとに設立された公益法人が運営しています。この保証に加入していれば施工前、或は施工途中に頼んだ工務店が倒産してしまった場合でも、例え建築途中であっても倒産した工務店の債権者に家や資材を持って行かれることはありません。ただし、住宅完成保証はその保証機構に加入している工務店に頼まないとその保証を受けられませんので、予定のある方は確認してみてください。もし、完成保証に加入していない工務店なら、そことは契約するべきではないと思います。瑕疵に関しては、こちらは日本で営業する住宅供給事業者には瑕疵担保保険への加入が義務化されていますのでこれは大手、中小問わず、全く同じ保証が受けられます。なので、ちゃんとした工務店設計事務所に頼む限り、保証の面で大手ならではのメリットは殆どないのですよね。

 

 

3:例えば「条件付き土地」なんて抱き合わせ販売には共感できない

土地と建物はそもそも別の税金が掛かる別の物ですし、注文住宅というなら施主はそこの組み合わせからキッチリ自分たちで決めたい物なのではないのでしょうか。注文住宅は主観と客観なら主観の割合の圧倒的に高く、且つマンションのような買い直しをするような類いの物ではありませんので、注文住宅では色んな要素を全てお客の側で自由に選べることが何より優先されるべき事だと思う訳です。それなのに、一事業所の都合の為にお客側に無理な妥協を飲ませてもオーケーという発想が出てくること自体に、ちょっと共感できません。もちろん大手の建てる住宅に魅力があれば抱合せ販売でもまだ許せますけど、商品開発の部分でお客に対する誠意どころかそれが「無知な奴を騙せたらラッキー」のような意図を疑うしかないものとなれば、さすがにもう一線を越えてるよなと思う訳です。こっちだって人生かかってますからね。抱き合わせ販売なんてことはせず、正々堂々、人生をかけて魅力のあるものを考えて作っている所が現にあるのですから、自分らはそこに頼めば良いだけの話だと思います。そういう所の違和感を大企業の組織の力でねじ伏せられる、という手応えの中で交渉することが日常になってしまっている環境が、注文住宅という性質のものにはそもそも不向きだと思うのです。

 

 

4:大手は事故や瑕疵があった場合、マンションは保証しますが注文戸建は逃げています

良くマンションで瑕疵が出た場合に大手は手厚い保証をしている前例がある為、戸建でも大手はマンションと同じ対応をするだろうと勘違いする方が圧倒的に多いのですが、GoogleYouTube等で「戸建」「欠陥住宅」のような語句で検索を掛けてみますと、大手で大きなミスや事故が出た場合、大手がユーザーの満足のいく形の保証をした形跡がほぼないことに気がつくと思います。マンションと戸建住宅では、裁判では公共性の部分で扱いが別のものとなっているのです。つまり、戸建住宅は裁判ではほぼ個人の注文の仕方が悪い使い方が悪い、という処理のされ方をされてしまうのです。一方、マンションは大規模マンションであればあるほど、そこで発覚した瑕疵は個人の注文の仕方が悪かった、使い方の荒さとは言い難いという証拠が集まりますので、大規模マンションで瑕疵が発覚した場合、建築裁判でデベロッパーが負ける場合があることを大手はちゃんと理解しています。なので、大手は大規模マンションは手厚く保証しますが、戸建の場合はどんなに大きな事故や瑕疵が発覚した場合であっても、会社側にとって一番負担の少ないリカバーをとりあえずして、あとは逃げ切る体勢を整えてしまうのです。

ご存知の方も多いと思いますが、裁判制度は過去の判例を基準に判断を決めるものなのです。裁判で過去の判例を覆すことはとてもとても大変なことで、特殊な裁判でない限り過去の判例を覆せることはまず難しいと考えられます。戸建住宅の建築裁判は特殊な裁判では全くありませんので当然、過去の判例が判断の基準になります。過去の判例YouTube等でも確認することができますので、知らない方は調べることをお薦めいたします。これだけの大きな被害があっても施主が負けるという判例が覆されることは難しい、という現実とは一度向き合うべきですよね。

更に、個人の戸建の建築裁判はマンションと比べて公共性の面からニュースで大々的に取り上げられることがまずありませんので、風評という部分でも無傷でいられる確率はとても高いのです。しかも大手は地場の工務店と比べて、ここで風評の影響を受けることがとても少ないと考えられるのです。どうも人は「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信を、大手が相手だと持ってしまう傾向があるようです。これが地場の工務店になりますと皆さん掌を返したように慎重になる訳ですが、そういう部分でも大手は守られていると言えると思います。そして大手はそれを分かって、それを利用していると思います。

注文住宅を大手に頼んだ場合、個人としては頼みの綱になるはずの民事裁判や風評の面で、実は始めからはしごを外されている状況にあるという、そこはマンションの場合と大きく違うということを理解しておくべきだと思います。

 

 

 

以上のように、色々考えれば大企業の企業風土がもう注文住宅という施主にとってやり直しの利かないイベントには適さない、ということで判断して良いと思った訳です。大企業の「チームで仕事」という個の力や責任を曖昧にできてしまう哲学と、大きな組織力で個人を握りつぶすことが容易くできてしまう環境で、個人の主観の固まりである注文住宅というイベントを取り仕切ろうというのには無理があるということです。大企業の仕事のやり方があるが為に、我々個人の立場で注文住宅の計画を成功させる為に必要な事などが明確な意志のもとにうやむやにされている以上、もう大企業はそこには向いていない、で良い訳です。加えて大手の注文住宅はコストパフォーマンスが悪いですから、もう大手に頼むメリットはウチにはなかったのです。

 

大手ハウスメーカーというのは元々が戦後復興、高度成長期に必然的に生まれた大量供給の需要があればこそ意味のあった事業形態なので、住宅供給が飽和状態にある今の日本の社会ではそのデメリット面の方が大きくなってしまっているということが、住宅の専門家の間では言われています。自分たちもその通りだと思っています。

 

世の中には住宅関連の仕事を好きでやっているものの、大企業の風土がもう実情に合わないという考えの人たちが沢山、大手の風土から脱出して活動しておられます。そういう人たちの集まりが、つまりちゃんとした地場の工務店なり個人の設計事務所になる訳です。注文住宅はそういう人たちの理念を頼る方が理に適っていると思いました。もちろん、ダメな地場の工務店なり設計事務所は施主が頑張って見抜ぬくしかない所ではありますが、そこさえ施主が面倒臭がらずに克服しさえすれば、大手で頼むより「確実」で「楽しむ」仕事で自分達の家を建てて貰えるでしょう。

 

自分らもちゃんとした工務店を、面倒臭いのを我慢して(後から段々楽しくなってきました)みつけ、限られた予算の中でも本当に「確実」で「楽しい」家を建てて貰ったと、その工務店に感謝しています。

 

 

信用のある相手の「好き」に共感できることが共同作業では大事なのです その2(新築無事に終わりました!)

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先週の続きです。
 
床材の種類は大きく分けて、針葉樹系のと広葉樹系の2種類に分かれるのですが、見た目やインテリアとしての治まりとしては、圧倒的に広葉樹系の方がお洒落で都会的な雰囲気にできるのですが、ウチが頼んだ工務店は広葉樹系の床材を一切使ってはくれないのでした。とにかく針葉樹系にしよう、と。地松かヒノキか杉かパインか、それ以外の材からは選んで欲しくありません、と。
 
これは、まあ、家族で一番モメたところでした。。
 
針葉樹系は木目や節のうるさいものが多く、どうあっても田舎の天然酵母のパン屋さんのような過剰なオーガニック風味の見た目になってしまう訳です。特にパイン材はトロピカルなリゾート風味満載で、ちょっと浮かれた雰囲気にはどうしてもなってしまうのですよね。
 
工務店の主張としては、広葉樹系の床材は踏み心地が硬くて冷く、靴を脱いで生活する日本の床材には適していない、ということなのです。針葉樹であればクッション性も高く足腰の負担も少なく、また熱伝導率が低くて冬でも足下がひんやりしずらく、靴を脱いで暮らす習慣の中では針葉樹系のメリットはかなり大きいです、というお話でした。
 
結果論ですけど、実際に生活してみて工務店さんの言う事はもっともなお話だと思いました。針葉樹系無垢板の感触というのは、裸足で生活すると本当に気持ちが良く、広葉樹系は床材に適していない、という話も納得なのでした。また、針葉樹系の無垢材の床は確かに足の負担が少なく、特に床をタイル貼りした水回りのエリアと比較するとその差は実感し易く、疲れている時でも本当に歩きやすいのでした。
 
家の造りという点から見てみますと、今の木造住宅の場合、基準値以上の耐震性を持てる強度を確保する為にどうしても昔の木造建造物のような木質感のある床の踏み心地が失われてしまう部分はあります。建物の強度として、床は水平剛性を司る部分になる訳ですが、その水平剛性を上げるには現状、床の下地材に構造用合板を使うしかなく、そこにどうしてもベニア板の硬くて殺伐とした感触が床の踏み心地に含まれてしまうのです。
 
それは、例えば古い木造校舎や寺院などの床の踏み心地なんかを期待するとがっかりする床の踏み心地には違いなく、そこでフローリング材に柔らかい針葉樹系の材を使う事で、その剛床工法にありがちな硬質な踏み心地を緩和することができるのです。これで硬い広葉樹系のフローリングにしてしまうと、見た目は洋風でお洒落にはできますが、確かに足に負担が掛かったと思います。この辺りの考え方は、さすが「木が好き」なだけのことはあるなー、と思いました。偏りはあっても、嘘はないのですよね。
 

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ただ、設計の段階でそこの実感のない時にそれは中々理解できないお話でもあり、見た目の過剰なオーガニック感は欠点でしかなく、そこをどうまとめればいいのか、そこで工務店の選択も含めて、我が家はかなり混乱したと思います。針葉樹で床を仕上げてしまうと、内装の見た目を洋風でお洒落な感じにしよう、という当初の構想を諦めざる得ない面があるのは、割と高いハードルではあったと思います。
 
で、ここでデザインのことも、もう少し調べてみるか、という感じでネット漁りを始めた訳です。その工務店を断るならやれることをやってからだな、と。針葉樹の床材でも自分たちの納得できる感じの内装はないものかと、寝る時間を削って夜な夜なネットを徘徊しました。
 
色々調べて行く内に「和モダン」のカテゴリーの中に、家族も納得できる内装のまとめ方があるんだというものを見つけ、内装の予定を洋風から和モダン的な方向に転換することにした訳です。ただ、和モダンで本当にお洒落にしようとすると、洋風でお洒落な内装の物よりもそのカテゴリーで一般流通してる建材が少ない為、造作の割合がどうしても高くなってしまう為、3000万しか使えないウチの場合は一般流通している建材を使ってそこそこでまとめるしかない、というのはその時点で分かりました。それはそれで嫌かも、とは思いましたが、そんな中、旭化成のモデルハウスの内装のまとめ方は、かなり参考になることにも気がついた訳です。
 

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旭化成の内装は安い一般的な物を使いつつ「70年代的な上品さ」の感じに仕上がる所に特徴があり、一般に流通している建材を和モダンと合わせる場合に、その「70年代的な上品さ」を拠り所に合わせていくと破綻の少ない印象にできるという手応えが得られるのでした。旭化成の、悪く言えばその時代遅れのセンスが、ここでは幸いしたのかもしれません。
 
最終的には和モダンと言いつつ、ほぼ旭化成の割と刺激の少ないセンスの方に寄った感じにはなってしまいましたが、針葉樹系のフローリングでもウチの目指していた「過剰なオーガニック感のない」「全体の印象として破綻のない」「モダン」な感じには十分できたと思います。デザインとしては当初の「夢」から比較すれば相当つまらない感じになりはしたものの、訓練された大工さんの精度の高い施工からも見た目からも、そして使い心地も含め、全体としてある種の普遍性を感じられる仕上がりにはとりあえずできたと思いますし、自分らみたいなタイプの人間が長く暮らすのには申し分のない住宅になったと思います。
 
相手のモチベーションを引き出す為には、こちらも踏ん張る必要のある所でちゃんと踏ん張らないとダメなんだという事は、今回改めて思ったでしょうか。振り返ってみると、フローリング材はウチにとってはかなり大きな踏ん張り所でしたし、あそこで良く持ち堪えたと自分たちを褒めてあげたいです。設計施工を設計事務所のような所ではなく、見た目は多少譲っても質実剛健工務店にお願いしようと決めたその優先順位を曖昧にしないことも大事でしたし、これ以上お洒落にするならもっとお金を使うか、お金が使えないなら設計事務所に行って構造の部分の希望や使い心地の部分を諦めるという選択になってしまうので、この落としどころが、ま、自分らの運というか星回りも含め、ベストだったのかなと。
 
という訳で、床材一つ取ってもこれだけ振り回される訳なので、実は他もこういうことの連続なのですよね。新築は想像以上にエネルギーを使いますし、完成した時は正直、もうヘトヘトでした。カーテンを選びましょう、という段階では家族含め、エネルギーが既に残っておらず、なんか下手な選び方しちゃったね、という箇所が何箇所か出てしまいましたが、まーしょうがないです。
 
 

信用のある相手の「好き」に共感できることが共同作業では大事なのです その1(新築無事に終わりました!)

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ご無沙汰しております。

 

その後、ウチの新築は完成し、引っ越しも終えて、まだ手をつけていない段ボールなどありつつ、でも一段落しましたのでブログを更新してみようと思いました。自分の文章力がアレなので、ブログのやる気が出なかったというのもありますが、自分も新築をやるのに個人ブログを随分参考にさせていただいたので、自分にできることは自分もやっとこうという、そんな感じで。。

 

新しい家で暮らし始めて2ヶ月ほど経ちましたが、今の所大きなトラブルも瑕疵のような症状もなく、思った通りの暮らしができており、家族で満足しております。もちろん、小さな行き違いなどが全くなかった訳ではありませんが、見習い大工や見習い設計さんの仕事も混ざってますので、ある程度はしょうがないかな、という感じです。見習い設計君はこのやろー、な訳ですが逃げも隠れもせず、やれるリカバリーは全てやってくれたのと、それ以上のリカバリーをさせることがウチにとって損なのか得なのかを考えて、落としどころを見つけて、引き渡しを受け、あとは気分良く次の生活に向かっていくのが良いと思いました。

 

さて、本題です。今回はフローリング材の話します。

 

注文住宅の仕様で割と全体像を決める際に比重の重いパーツだなあと、後から思ったのでそのことを書いときます。

 

この家のフローリングは無垢板にしたのですよね。ただ、床材に関してウチはそんなにこだわっていなかったというのが本当の所です。無垢板のフローリングは値段が高いですし、むしろ予定としては予算を削らなければならない状況になればラミ板でも十分、という腹づもりでした。しかし、頼んだ工務店の目指す住宅には「こう」という物がハッキリあった為、ウチも無垢板のフローリングにするしかなかったのでした。

 

結局、木造住宅のメリット・デメリットを本気で考えてる工務店はどうしても「木が好き」な所ですから、そういう所でラミ板フローリングとかどうですか?なんて言い出そうものなら工務店のモチベーションがガクっと下がるというのが、あからさまにあるのですよね。

 

ウチとしては仕様の優先順位としては、まず構造が木造であること、構造材を気密シートや構造用合板などで密閉せず、湿気の通り道が壁内部からであっても必ず確保されている工法であることと、それと関連して断熱材がセルロースであること、白蟻対策も含め基礎のコンクリートに一体打ちの工法を採用していることが一番にありました。

 

壁の内側の湿気の通り道を必ず確保してある工法にこだわる理由は別の機会に書くとして、その優先順位の一番に来るものを外さないとなると、色々な工務店やHMの話を聞いて回っても、最終的にはどうしても「木が好き」な工務店になるしかなかったのでした。

 

「木が好き」という部分をもうちょっとフラットに考えて無垢材のフローリングでなくてもOKな “ちゃんとした” 工務店になると、大体は木造か鉄骨のラーメン構造を採用している所になってしまい、鉄骨はウチはとにかくナシなので、木造ラーメンはどうなんだ、という話になりますと、木造ラーメンは構造用合板などで壁の内側の湿気の通り道を遮断する工法なので、ウチとしてはナシになる訳です。

 

また木造ラーメンは、使用する金具が特許関連の物が多いことと集成材を使うことで、どうしてもコストが高くなってしまう面もあり、無垢板のフローリング→ラミ板フローリング分のコストダウンと相殺されてプラマイゼロにもなるか、もしくはもう少しお値段高めになってしまうのです。

 

特許関連の金具を使用しない、軸組なのかラーメンなのか壁式なのか良く分からない中途半端な工法で建てている(特許関連の金具と同じ強度が出せるのかは謎)所だと、確かにラミ板のフローリングを採用して、軸組的なことで建ててくれて、おまけに安くなり、最終的には施主のわがままを聞き入れてくれる形にはなりますけど、さすがにそれもどうかな、と思った訳です。

 

つまり、こちらの希望を言われればやるけどオーソドックスな仕事しかやらない所と、言われなくても自分たちの大好きな工法を日々極める事を楽しみながらやっている所と、その差は小さくないだろうと考えた訳です。例えば、人間のやることなので悪意はなくてもミスや事故は必ず起きてしまうのですが、その際リカバリーをどう対処する?という所を考えたら、その仕事、その工法が「大好き」で仕事を積み重ねてきている人たちは、一般的なリカバリー方法として知られていないようなことでも、その工法を熟知していればこそ思いつけるリカバリーを普通にやるのです。そこが結局は半年間という長い工程の中で積み重なって、最後の仕上がりの大きな差となっていくであろう事は、容易に想像ができた訳です。一般的なリカバリー方法にとらわれず、その工法にとっての最善の事を言われなくてもやってくれる安心感は、工務店選びで外せないことの一つではあるのではないでしょうか。

 

家は構造上、ひとたび壁を打ち付けてしまえば、中でどんないい加減なリカバリーがなされていようが、壁を落としてみないことにはそれが分からない性質のものです。バレなきゃいいか、という心理が働きやすい状況が間違いなくそこにはあるわけです。単純に人の性善説をどこまでも無邪気に信じてはたして大丈夫なのだろうか、という部分は大きいかもしれません。

 

「大好き」ということは、確かに人の偏りのある感情の部分を含む為、一見バランスを欠いた状態に見えなくもないのですが、「大好き」であるということイコール、いい加減なことを嫌う、というメリットが、一方ではある訳です。その「大好き」がベースになって鍛えられたバランス感覚と精度の高い技術がセットになれば、人間は初めて言葉以上の信用を身につけることができる訳ですし、それが昔ながらの人間の信用を担保してきた「修行」の習慣ではないでしょうか。それを敢えて避けようというのなら、それは裏があることを勘繰るのに十分な理由になると思います。

 

最近の施工技術に関して良く「誰が建てても」品質に差が出ないという話がされるのですが、「誰でもできる」ということは裏を返せばいい加減な人でも素質のない人でも施工に参加できることでもあって、それでも経営サイドが敢えて「誰でも参加させている」のは安い労働力の数を確保するという、ビジネス側の都合でしかない訳です。

 

ビジネス側の人たちは「いやいや、ウチはいい加減な人は雇っていません大丈夫です」と口先だけのことを言いはしますが、そのメーカーのモデルハウスを見学すれば掃き出し窓のような大きな開口部の左右の寸法が2mm以上狂ってる、押し入れの中の天井部分の施工がズレてる、壁クロスの淵のサイズがピッタリでなく余った状態の部分がめくれてる、2階部分の水平が狂ってる(水平器持参推奨)、二階や階段でちょっとジャンプしたら建物から「ミシっ」という音がしたなど、明らかに「口先だけ」が証明されたモデルハウスがそこにデンと建っている訳です。何度も書きますが、それが「大好き」で訓練された素質のある人は、そんな仕事が残ってること自体、本人のプライドがそれを許さないのです。

 

言葉だけの説明で辻褄が合ってればそれでいい、というのはいつからそんな時代になったのでしょうね。

 

もちろん、業界全体で考えれば「修行」の篩がきちんと機能してしまえば、今の時代ですと大工を志望する若い人が減ってしまう、という面はあるそうです。厳しく給料も安い世界に入ってくる若い人が年々減っているのだそうです。そういう部分で、業界全体としては誰でも参加のできるシステムを作らないと、住宅の数を供給することができなくなってしまうという事情がある、という話は良く聞かされました。ただ、若い人側の話を聞けば、それも大体は単にその人に適正がないか、適正のある人なら賃金をケチるから起こる現象のようなので、適正のない人はもうしょうがないので、賃金をケチられて辞めていかれることに関しては、経営サイドがお高いマンション暮らしや高級外車を乗り回して若い人の賃金をケチっているのであれば、それは“時代のせい”ではないでしょう。

 

自分たち施主側としては、ちゃんと大工に賃金を払っている経営者の所にまとまったお金を落としていく、ということしかできない訳ですが、それを地味にでもやっていくことが、施主の側としての良い業界にしていく為にできることとは思うので。こんなウチの考え方を全うするなら、もうレアケースと言われてしまう工務店を探し続けるしかないと言えば、その通りなのですよね。ただ、ウチは時間を掛けて探して、ちゃんと見つかりました。ウチのレベル(建物は3000万円/32坪なので、安くはないですが、注文住宅の世界では中のくらいです)でも探せば見つかるということは、世の中まだまだ捨てたものじゃないと思います。

 

最終的にはウチが頼む事に決めた工務店さんは、間違いなく「木が大好き」でしたし、そこで雇われている大工さんにも面倒臭いと思われる子弟関係がちゃんと残っていました。施工物件を2件内覧させて貰って、話もかなり長く聞かせて貰って、後天的なことも含めて、ここは間違いなく技術やいい加減な人をふるい落とすフィルターも機能していると感じましたので、ここはウチも無垢板のフローリングに“共感”するのも悪くない、と思ったのでした。コスト高の問題も、他の工務店に行けばどの道、別の理由でコストが上がってしまうことを考えれば欠点にはならないな、と。信用できるパートナーの「好き」に共感することも、共同作業で良い結果を得るには絶対必要なことなのですよね。

 

という訳で、ウチの床も無垢材にした訳ですが、無垢材の床材を何にするか、ここで一つの大きなデザイン面での妥協点を向かえてしまうのでした。(続く)

 

 

ウチが工務店を選んだ理由(その2)

(前回の続き)

因みに、床の水平のような施工精度をどうやって見分けるのかという話になれば、こればかりは住宅展示場の数こなすしかない面はあると思います。まずは営業さんがいい人かどうかを忘れられるようになって、次に天井が高い空間と明るい照明に興奮しないようになることから始めると良いかもしれません。

 

営業さんがどんなにいい人でも、営業さんはあくまで組織のヒトなので、一度着工してしまえば営業さんにはもう現場の細かいことに関しての(大工さんの細かい手抜きを指摘して正す、等)発言権はほぼありませんので、営業さんの人柄だけで決めてしまわないような心の準備は大事かもしれません。また、人間は天井の高い空間に入れられると興奮する、のような習性を幾つか持っているようなので、住宅メーカーの方々をその習性を利用した営業戦略をしたたかに練った上でモデルハウスを作っています。「奥さんを興奮させてしまえばコッチのもの」の類の罠がモデルハウスには随所に仕掛けられていますので(ガラス張りのお風呂とかも?)、その手に乗らないように奥さん共々、準備をして挑むのが吉だとは思います。数をこなし、少し慣れてくればそれで準備ができた状態になりますから、そこからが本番だとは思います。

 

目安として、例えば掃き出し窓のような大きな窓枠の右側と左側の寸法を測ってみて、2mm以上の誤差があれば「まあいいや」の積み重ねで施工された物件と言って良いと思います。一般事務職の世界では2mmは気にするほどではない誤差の範疇として扱われますが、職人の世界では2mmの違いは誤差としては許容されない大きな差として扱われます。ですから腕のある大工なら、それが掃き出し窓の枠であっても右側と左側の寸法差を2mm以内に収める施工をします。こういった日頃の行いの積み重ねの中でしか身につけることができない、キチンとした技術を基準に人に優劣を付ける、昔ながらのフィルタリングが機能している世界が、日本にはまだ残っているのですよね。もっともこのフィルタリング機能は今は「無駄な修行」と蔑ろにされてしまう向きもありそうですが、見えない所のミス一つ「まあいいや」で済ませない人かどうかを見分ける、これは一番確実な方法ではありますので、こういうルールは事務職文化に従う必要はないのかな、とは思いますよね。

 

住宅展示場だけでは水平の精度の高い建物に出会う確率も非常に低いので、ここはやはり地域で腕がある、と言われている工務店の施工物件(大体は社長の家)と比べてみることもお勧めします。住宅展示場や社長宅の内覧は、通常は住所と氏名と電話番号を記入して内覧しますから、その後に営業を掛けらる煩わしさは確かにありますが、営業の方に遠慮したが為に施工の悪い家に住まなければならなくなるくらいなら、心を鬼にして多くの物件を内覧してみる方をお勧めはします。

 

木造のモデルハウスを見学する際、もう一つ気にしておくと良いことがあります。それは構造材が不足しているかどうか、です。木造の住宅規模の建物ですと、床の踏み心地で建物の構造の強度をそれなりに感じることができたりするのです。これが鉄骨やRCになりますとさすがに難しい訳ですが、木造なら構造材が足りているのか不足しているのか、ある程度まで床の感触でそれを感じることができる訳です。僕ら素人がそういった感覚的な違いを絶対値として感じることは難しいので、これは他と比べることでしかわからない感覚なのですが、建物にしっかりとした分量の構造材が入っていれば、体はしっかりとした足場を感じることができます。これは1階部分ではなく、2階部分に上がった時に感じやすくなる感覚です。それはグラつく感覚ではなく、床の密度の濃さで感じられる感覚なのです。密度が薄い感触のある床は、構造材が不足している可能性があるでしょう。

 

僕が入った都内の某お洒落なモデルハウスも2皆部分の床を支える構造材が不足している感は否めず、体重のちょっと重たい人がジャンプしたら構造の繋ぎ合わせの部分が簡単に痛んでしまいそうな感触があるのでした。構造材が足りなければ当然、一つの継ぎ目に掛かる負荷は大きな物になっていきます。当然、痛むのも早い訳です。もちろん、その密度の薄い感触が構造材が不足していることによるものなのか、正確には分からない訳ですが、新築が一発勝負である以上、そこでの冒険は避けたい訳です。

 

総じてそのお洒落ハウスは、見た目以外の部分が自分たちが求める所で緻密に選択、施工されている印象はありませんでした。

 

逆にウチが最終的に新築をお願いすることにした工務店の施工物件では、そういう部分で疑問を持つことがほぼないのでした。二つを比較しますと、もう歴然と違う訳です。工務店の施工物件は窓枠の左右のズレが2mm以内に収まるのはもちろんのこと、歩いて構造材の不足を感じることもなく2階部分でも十分に密度の濃い踏み心地があり(人が少々ジャンプしたくらいで継ぎ目が痛みそうな感じもない)、そして使われる材のグレードに関して、どうせ分からないんだから、のような勝手な見切りで安っぽいもので済ませてしまうことなく、隅々まで必要な所に適切なグレードの材を使用するという、そこで暮らす人の五感を決して蔑ろにしない職人気質の設計がなされているのでした。これがウチの求めているものですよ、とその時に思いました。

 

二つのモデルハウスの坪単価を比べますと、概ね一緒でした。どちらもローコスト住宅よりは高額です。高額なだけに品質そのものはローコスト住宅をどちらも上回っている部分がちゃんとあり、ここで住宅の価格帯でのジャンル別けや仕様グレード別けの相関関係が何となく見えてきた訳です。細かくは書きませんが、中途半端になることを避けるなら「両方」は欲ばれないんだよなぁ、と悟るに至り、最終的にはウチは工務店が合ってるよ、となった訳です。

 

ある意味、見た目を諦めた訳ですが、それでもその工務店の家はベーシックなジャンルの建物としてはデザインセンスに野暮ったさはなく、デザインに関しても勉強をしている人を雇っていたり、オーソドックスながらも十分上品で落ち着きのある建物にまとまっていたというのも、決断を後押ししました。

 

加えて書くなら、リセールバリューも考えにありました。僕は数年前、興味があって不動産の競売市場を観察していたのですが、そこで個性豊かな注文住宅のあまりの不人気ぶりを目の当たりにして、次第に新築するならオーソドックスに限る、と思うようになっていました。競売物件に出てくる注文住宅は、「白金台駅徒歩5分」敷地面積300㎡のようなスペシャルなものでない限り、ちょっとやそっとのいい感じの家でも札が殆ど入らないのが現実なのです。誰か一人くらいは「良さ」を分かってくれる人がいる、なんて施主の当初の目論見が世間ズレれをした幼稚な思い込みでしかないことを、競売市場はまざまざと見せつけてくれるのです。一戸建てで札が入りやすいのは、築浅の種も仕掛けも思い入れも何もない、普通の分譲住宅なのですよね。

 

注文住宅であろうが不動産には違いありませんので「出口戦略」とは無縁ではいられません。止むに止まれず売却、或いは賃貸に出す、ということになった場合、買い手、借り手が付きやすい物件であることは、特にウチのような資産家ではない家庭の場合、どうしても必要な要素になってきてしまうことも決定に影響したと思います。

 

ウチが工務店を選んだ理由(その1)

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個人の注文住宅の設計施工を請け負ってくれる業者としては大雑把にハウスメーカー工務店設計事務所+施工会社の3種類がある訳ですが、ウチはその中で工務店を選びました。設計事務所なんかで建てるお洒落な家に全く憧れがない訳ではありませんが、お金の話をするのもヤボな話しですけど、憧れは憧れのままなのでした。

 

ウチはそもそも家は基礎、構造、断熱のグレードで住み心地とメンテナンスのし易さ(結露など)が決まるという考えでずっといますので、基礎、構造、断熱が世間で言われている標準的な仕様のままでは不足していると思っているのです。大げさな物言いを承知で書いてしまえば、基礎、構造、断熱はグレードの高い仕様でやっと意味がある、くらいに思っていますので、そこの予算は削らないというのが一応の方針としてありました。もちろん、それをバッチリ揃えた上で見た目もお洒落に出来たら言うことないのですが、色々調べたり話しを聞きに行ったりすると、やはり「両方」は無理そうだな、と。

 

そこでどちらか片方となると、工務店の方が自分たちの求めるバランスに近い物を作るかな、と思った訳です。両方欲張れなくもなさそうでしたが、欲張った結果、見た目も中途半端、質も中途半端、という出来上がりになったら嫌だなというのもありました。何せ、やり直しの利かない一発勝負ですからね。

 

設計面から見て、敷地として面積約110㎡(建物の幅として使えるのは4間)、侵入部分が北側に一箇所だけ、その間口が2.0mという条件なので、玄関の位置はほぼ決まってしまいますし、南側に個室や居間を持ってくることを前提とすれば、間取りとしてはどこに頼んでもそう多くのバリエーションを考えられる敷地条件ではないのは大きかったと思います。

 

少し話は飛びますが、建物の形が複雑になればその分建築コストは高く付いてしまう訳です。外壁の量や屋根の面積、耐久性を確保するコスト等を含め、木造では正方形の2階建て構造が一番安く建てられるのだそうです。ですから理屈としては前面道路の幅が広く接道幅も広く、正方形の整形地が一番安く建物を建てられる、ということになる訳ですが、ウチの敷地はその条件からはそれなりに外れる敷地なので、元々建物自体の建設費がそれよりは高く付いてしまうのです。そこに予算3,000万という縛りが入ると、建物の形としてできることが限られてしまい、更に侵入口が一箇所、間口2.0mの縛りが加わりますから、間取りもそう色々やれる訳ではなかった、ということなのでした。結局、建築事務所や工務店にプランをお願いしても、間取りの部分ではそう大きな差は出なかったのですよね。

 

そうなると設計料や管理コストの割合を高くする意味がインテリアや天井の高さと形のような見た目の部分が殆どになってしまいますので、見た目にどこまで予算をかけるか、という判断になってきた訳です。

 

そこで、インテリアにお金を掛けて基礎、構造や断熱を標準にした場合と、基礎や構造、断熱等の家の見えない部分のグレードを上げるのでは何がどのくらい違ってくるのかということは一応、両タイプを体感として確認しておこうということになり、両方のモデルハウスを見に行った訳です。デザイナーズ系のおしゃれな住宅のモデルハウスは都内にもあまりないのですが、一部の住宅展示場に施工されている所がありますので、これから新築の予定のある方はネットで調べて是非、見に行かれることをお勧めします。

 

僕が見たデザイナーズ系のモデルハウスはデザインとしては地中海系の洋風・オーガニック・ゴージャスな路線で、センスも大変お洒落で「見た目」だけなら申し分ありませんでした。これで基礎や構造の質が自分たちの思うレベルだったら言うことなし、という感じでした。営業の方は「基礎も構造もそこで手を抜いたら意味がないじゃないですか私たちの家はそこもちゃんとしています」と言っていました。

 

と、言ってはいましたが、僕はその昔ずっと仕事で木材を扱うことをやっていましたので材のグレード(等級じゃなくて繊維質の密度とかそういうの)は触れば分かるのですが、そのモデルハウスで使われていた木材はそんなに高いグレードの材ではありませんでした。特に窓枠のようなあまり目立たない所で使用されている材の手触りは明らかに安い材で、がっかりしてしまう部分はあったかもしれません。材のグレードはその建物を使用した際の触り心地に直接関わる所ですから、五感を使った暮らしを楽しみたい方なら材のグレードは使い心地を左右するものだと考えて良いと思います。そこの感触が安物、というのは自分にとっては割とマイナス要因ではありました。

 

床の踏み心地も良いものではなく、フローリング材はもちろん、ひょっとしたら梁や他の構造材のグレードも低いかもしれないという疑問は持ちました。もっとも、そのメーカーは木造2階建てなら構造計算をしない方針のメーカーなので、材の良さが発揮できる負荷以上の負荷を構造材にかけてしまう設計をしている可能性があり、そうなると材の良さもなくなってしまう訳ですが、とりあえずそこはちょっと分からなかったです。

 

あとは前にも書きましたが、床の水平の精度は大工さんの腕そのものと言って良い部分でもある訳です。つまり、失敗をしても「まあいいや」で済ませない習慣を自分に課している人でない限り、その大工さんが高い精度で床の水平を出せることは決してない訳ですから、そこで失敗を誤魔化す人かどうかのフィルタリングがある程度はできる訳です。僕が見たデザイナーズ系のお洒落モデルハウスは、その部分の施工精度が僕たちの期待したレベルにはありませんでした。僕ら一般の人間は一発勝負で施工を頼むしかない以上、その日頃の習慣で業者さんのフィルタリングを掛けるしかない部分は、どうしてもあります。そういう意味で、床の水平が出ているかどうかは業者選びとして気にしておかなければならない、とても重要な要素なのですよね。

 

                                 (続く)

 

住宅の新築時の契約形態の違いについて考えてみた

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契約というのは問題が起きなければ必要のないものと言えなくもないのですが、さすがにお互い営業活動を通じて去年今年に知り合ったレベルの人どうしのウン千万円のやり取りでそんなことも言っていられませんので(悪意がなくても行き違いや事故は起こるので)、住宅の新築時に普通の人であっても契約の中身をきちんと把握しておくことは大切だと思われます。建築主の側としては行き違いや事故が発生した場合の事後処理を行う際に必要な責任の所在が明文化されていることがとても大事になってきますし、設計・施工業者の側としては、建築主が決められた期日までに約束した金額を支払うことを明文化しておくことが一番大事なことになってきます。

 

設計・施工側の責任の所在ということになりますと住宅を施工する場合、これが意外と知られていなかったりするのですが、設計した人の責任と施工した人の責任は別に扱われます。例えば設計上のミスで雨漏りが起きた場合は設計者の責任になりますし、施工上のミスの雨漏りは施工業者の責任になる訳です。暮らす人にとっては雨漏りは雨漏りなのでどっちでもいいからとにかく直してくれよ、という話で済ませて欲しい訳ですが、事故が起きた場合の責任を厳密に追求した場合、その費用の請求先は原因次第で変わってきてしまうのです。

 

住宅業界では、設計した人の責任を問う契約を設計監理契約と呼び、施工する人の責任を問う契約を工事請負契約と呼んでいます。

 

家を建てる場合、原則としてこの二つの契約を結ぶことになるのですが、設計と施工を一つの会社でこなしてしまう工務店や大手ハウスメーカーの場合、設計の部分の責任も含めて全てを工事請負契約として契約を結んでしまいます。設計監理契約がなくても契約書の中で工事施工の他に設計も同時に依頼している旨が明記されていたり、見積もりの項目に「設計料」の項目が含まれていれば、特に設計監理契約を別途結ばなくても問題はなさそうです。

 

設計監理契約と工事請負契約を別々に結ぶケースは、施主が設計事務所に設計を依頼し、設計事務所が外部の工務店に施工を依頼する場合が殆どになると思われます。

 

法律上、設計監理と工事請負を別々に契約することと、工事請負契約で一本化することとでメリット・デメリットのような差は出ませんが、実務においては契約形態の異なることで差は出ると言えます。ここでその直接的ではないにせよ、差の出る部分でのメリットとデメリットを書いておこうと思います。

 

設計監理と工事請負を別々に契約する所に頼むメリット

施工業者が手抜きをしたり事故を誤魔化したり、ということを監視できるという点がメリットになります。悪質な隠蔽が行われなかったとしても、施主との打ち合わせで決められた図面に従って正確に施工されているかのチェックを、第三者の立場でシビアにチェックできるメリットは、特に特別注文の多い仕様の場合は大きいと思われます。

 

また、専門知識を持った設計者が工事費用に関して厳しくチェックができる為、無駄な費用を削減することを施工業者に要請することができるのもメリットとしてあげられると思います。

 

設計監理と工事請負を別々に契約する所に頼むデメリット

この二つを別々に契約する一番のデメリットは責任が分散してしまうことです。施工にミスが出た場合、どちらのミスかを特定する際、必ずしもどちらかのミスと特定できないケースもそれなりにあるのですが、その場合、施工会社と設計事務所で責任の所在が真っ向から対立することもしばしばあるようです。責任の所在で設計者と施工業者が対立してしまった場合、その対応が大幅に遅れてしまうようなことも起きているようです。

 

特に設計事務所がローコストで注文住宅を新築するような企画ですと設計事務所が施工業者の仕事を安く買い叩いてる可能性があり、その場合、施工業者の心証は良くありませんから(当たり前ですよね)、特に注意が必要だと思われます。

 

もう一つデメリットとして、施工業者と設計事務所でお互い初めての仕事になる場合、施工業者は設計者の意図を一から汲み取る必要があり、普段から一緒に仕事をしている者どうしのやりとりのようにはまずいきませんので、確率の問題ではありますが、事故や行き違いが発生する確率は高くなる、ということは言えます。そうならない為に設計・監督者が現場に足蹴に通わないといけないのですが、設計・監督者もそうそう毎日現場にばかりも行っていられないのが現実ではあります。

 

設計監理契約を省いて工事請負契約に一本化している所に頼むメリット

設計した人と施工する人が常に一体となって仕事をしている会社であれば、“特別仕様”の設計であっても、レギュラーに対処できることとイレギュラーな対応が必要なことの区別が明確ですから、事故を未然に防ぐ為に必要な装備であったり仕様の変更等を以心伝心のような形で準備し合えるのはメリットと言って良いと思われます。

そういう部分も含め、設計と現場が身近な所で密に打ち合わせができる体制があることは、設計者が頻繁に現場に通わなくても事故や行き違い等を最小限に抑えられるメリットがあります。施工現場では設計・監督者が急な打ち合わせ等でたまたまその日、現場に行けなかった、というようなことは良くあることのようです。

 

ただし、大きな組織では上記のようなメリットは出にくい傾向にあるかもしれません。

 

設計監理契約を省いて工事請負契約に一本化している所に頼むデメリット

事故や手抜きが起きてそれを隠蔽してしまおうという意思が設計者と施工者双方に働いた場合、抑止力が建築主のチェックしかなくなってしまう(瑕疵保険会社の検査もありますが、これは厳しくし過ぎると工務店から契約を他の保険会社に変えられてしまうリスクも実はあり、制度の仕組みとしては性善説を頼りにするしかないのですよね)という点はデメリットになると思われます。また、普段仕事をし慣れていればこそ起こる気の緩みで照明の位置等の単純なことがおろそかになってしまう事故も(建築主の意図とは違うところに照明が付けられてしまった)、起こりやすいかもしれません。

 

あとは良く言われることですが、設計の段階で現場の施工のし易さばかりを優先させてしまい、オリジナリティーの要素が減ってしまうというデメリットはあるでしょう。